ある無名兵士の詩とサンタクロース。

ある無名兵士の詩

この言葉は、ニューヨーク大学付属ラスク・リハビリテーション研究所のロビーの壁に掲げられていて、140年前にアメリカの南北戦争に従軍した南軍の兵士が記したものといわれています。

140年も前の無名詩が、多くのアメリカ人の心に刻まれる言葉となったのは、1950年代、元大統領候補だったA・スティーブンソンがクリスマスカードに記してからのようです。

彼は、52年と56年の大統領選に民主党候補として出馬しました。しかしながら、二度とも、アイゼンハワーに敗北しました。失意のさなかに、田舎の教会で彼はこの詩を見つけたといわれています。

珠玉の言葉が、彼を思慮深い人物に立ち直らせました。1965年、国連大使としての最後の演説が証明しています。

『われわれはみな、旅のみちづれ、小さな宇宙船の乗客。

いまにも壊れそうなこの船に、十分な配慮と、愛情を注ごう』

彼は「宇宙船地球号」という概念を世界で初めて示し、それは、永遠に残る人類の主題となりました。

「悩める人々への銘」    作者不詳

大きなことを成し遂げるために力を与えてほしいと、
神に求めたのに、謙遜を学ぶようにと、弱さを授かった。

より偉大なことができるように健康を求めたのに、
より良いことができるようにと病弱を与えられた。

幸せになろうとして、富を求めたのに、
賢明であるようにと貧困を授かった。

世の人々の賞賛を得ようとして権力を求めたのに、
神の御心を知るようにと非力であることを授かった。

人生を楽しむためにあらゆることを求めたのに
あらゆることを楽しめるようにと、生命を授かった。

求めたものは一つとして与えられなかったが、
願いはすべて聞き届けられた。

神の意にそわぬ身であるにもかかわらず、
心の中の祈りは、すべて叶えられた。
私はあらゆる人の中で、もっとも豊かに祝福されたのだ。

(ニューヨーク州立大学病院の壁に書き残された詩)

A CREED FOR THOSE WHO HAVE SUFFERED

I asked God for strength, that I might achieve
I was made weak, that I might learn humbly to obey…

I asked for health, that I might do greater things
I was given infirmity, that I might do better things…

I asked for riches, that I might be happy
I was given poverty, that I might be wise…

I asked for power, that I might have the praise of men
I was given weakness, that I might feel the need of God…

I asked for all things, that I might enjoy life
I was given life, that I might enjoy all things…

I got nothing that I asked for — but everything I had hoped for

Almost despite myself, my unspoken prayers were answered.
I am among all men, most richly blessed!

Author unknown

This creed is hung on a wall at a waiting room of Institute of Rehabilitation Medicine, 400 East 34th Street NYC.

サンタクロースって、本当にいるんでしょうか?

今から100年以上前のお話しです。

ニューヨーク・サン新聞に、次のような社説が掲載されました(1897年9月21日)。

8歳の女の子からの「サンタクロースって、いるんでしょうか?」という質問の投稿に、同社のフランシス・P・チャーチ記者が社説で答えたものです。

今でもクリスマスの時期が近づくと、アメリカのあちこちの新聞や雑誌に、この社説が繰り返し掲載されるとのことです。

DEAR EDITOR: I am 8 years old.
Some of my little friends say there is no Santa Claus.
Papa says, ‘If you see it in THE SUN it’s so.’
Please tell me the truth; is there a Santa Claus?

VIRGINIA O’HANLON.
115 WEST NINETY-FIFTH STREET.

VIRGINIA, your little friends are wrong.
They have been affected by the skepticism of a skeptical age.
They do not believe except [what] they see.
They think that nothing can be which is not comprehensible by their little minds.
All minds, Virginia, whether they be men’s or children’s, are little.
In this great universe of ours man is a mere insect, an ant, in his intellect,
as compared with the boundless world about him,
as measured by the intelligence capable of grasping the whole of truth and knowledge.

Yes, VIRGINIA, there is a Santa Claus.
He exists as certainly as love and generosity and devotion exist,
and you know that they abound and give to your life its highest beauty and joy.
Alas! how dreary would be the world if there were no Santa Claus.
It would be as dreary as if there were no VIRGINIAS.
There would be no childlike faith then, no poetry, no romance to make tolerable this existence.
We should have no enjoyment, except in sense and sight.
The eternal light with which childhood fills the world would be extinguished.
Not believe in Santa Claus! You might as well not believe in fairies!
You might get your papa to hire men to watch in all the chimneys on Christmas Eve to catch Santa Claus,
but even if they did not see Santa Claus coming down, what would that prove?
Nobody sees Santa Claus, but that is no sign that there is no Santa Claus.
The most real things in the world are those that neither children nor men can see.
Did you ever see fairies dancing on the lawn?
Of course not, but that’s no proof that they are not there.
Nobody can conceive or imagine all the wonders there are unseen and unseeable in the world.

You may tear apart the baby’s rattle and see what makes the noise inside,
but there is a veil covering the unseen world which not the strongest man,
nor even the united strength of all the strongest men that ever lived, could tear apart.
Only faith, fancy, poetry, love, romance,
can push aside that curtain and view and picture the supernal beauty and glory beyond.
Is it all real? Ah, VIRGINIA, in all this world there is nothing else real and abiding.

No Santa Claus! Thank God! he lives, and he lives forever.
A thousand years from now, Virginia, nay, ten times ten thousand years from now,
he will continue to make glad the heart of childhood.

From the editorial of The Sun. September 21, 1897

きしゃさま わたしは、八つです。
わたしの友達に「サンタクロースなんていないんだ」って言っている子がいます。
パパに聞いてみたら、「サン新聞に、問い合わせてごらん。新聞社で、サンタクロースがいるというなら、そりゃもう、確かにいるんだろうよ」と言いました。
ですから、お願いです。教えてください。
サンタクロースって、本当にいるんでしょうか?

バージニア=オハンロン
ニューヨーク市 西95丁目115番地

バージニア、お答えします。サンタクロースなんていないんだという、あなたのお友達は間違っています。
きっと、その子の心には、今はやりの、何でも疑ってかかる、うたぐりや根性というものがしみこんでいるのでしょう。
うたぐりやは目に見えるものしか信じません。うたぐりやは心の狭い人たちです。
心が狭いために、よく分からないことがたくさんあるのです。
それなのに、自分の分からないことは、みんな嘘だと決めてかかっているのです。
けれども、人間の心というものは、大人の場合でも、子どもの場合でも、もともとちっぽけなものなんですよ。
私たちの住んでいる、この限りなく広い宇宙では、人間の知恵は、一匹の虫のように、
そう、それこそ、ありのように小さいのです。
その広く、また深い世界を推し量るには、世の中のことすべてを理解し、
すべてを知ることのできるような、大きな深い知恵が必要なのです。

そうです。バージニア、サンタクロースがいるというのは、決して嘘ではありません。
この世の中に、愛や、人への思いやりや、真心があるのと同じように、サンタクロースも確かにいるのです。
あなたにも分かっているのでしょう。
世界に満ちあふれている愛や真心こそ、あなたの毎日の生活を、美しく、楽しくしているものだということを。
もしも、サンタクロースがいなかったら、この世の中はどんなに暗く、寂しいことでしょう。
あなたのようなかわいらしい子どものいない世界が考えられないのと同じように、サンタクロースがいない世界なんて想像もできません。
サンタクロースがいなければ、人生の苦しみを和らげてくれる、子どもらしい信頼も、詩も、ロマンスも、なくなってしまうでしょうし、私たち人間の味わう喜びは、ただ目に見えるもの、手で触るもの、感じるものだけになってしまうでしょう。
また、子ども時代に世界に満ちあふれている光も消えてしまうでしょう。

サンタクロースがいない、ですって!
サンタクロースが信じられないというのは、妖精が信じられないのと同じです。
試しに、クリスマス・イヴに、パパに頼んで探偵を雇って、ニューヨークじゅうの煙突を見張ってもらったらどうでしょうか?
ひょっとすると、サンタクロースを捕まえることができるかもしれませんよ。
しかし、例え、煙突から降りてくるサンタクロースの姿が見えないとしても、それがなんの証拠になるのです?
サンタクロースを見た人はいません。けれども、それはサンタクロースがいないという証明にはならないのです。
この世界で一番確かなこと、それは、子どもの目にも、大人の目にも見えないものなのですから。
バージニア、あなたは、妖精が芝生で踊っているのを、見たことありますか?
もちろん、ないでしょう。だからといって、妖精なんてありもしないでたらめだなんてことにはなりません。
この世の中にある見えないもの、見ることができないものが、なにからなにまで人が頭の中で作り出し、想像したものだなどということは決してないのです。

赤ちゃんのがらがらを分解して、どうして音が出るのか、中の仕組みを調べてみることはできます。
けれども、目に見えない世界を覆い隠している幕は、どんな力の強い人にも、いいえ、世界中の力持ちがよってたかっても引き裂くことはできません。
ただ、信頼と想像力と詩と愛とロマンスだけが、そのカーテンを一時引きのけて、幕の向こうのたとえようもなく美しく、輝かしいものを見せてくれるのです。
そのように美しく、輝かしいもの、それは人間の作ったでたらめでしょうか?
いいえ、バージニア、それほど確かな、それほど変わらないものは、この世には、他にないのですよ。

サンタクロースがいない、ですって? とんでもない。嬉しいことにサンタクロースはちゃんといます。
それどころか、いつまでも死なないでしょう。
1千年の後までも、百万年の後までも、サンタクロースは、子どもたちの心を、今と変わらず、喜ばせてくれるでしょう。

1897年9月21日
サン新聞編集者から

私が感想を書いてもいいのだけれど、それは無粋というものでしょう。

以上、アメリカのお話でした。