認知の歪みから起こるメンタル不調からの回復に向けて
認知とは…
物事のとらえかたのことを「認知」といいます。
同じできごとに出会ったとしても感じ方はひとそれぞれちがいます。
その際にものごとを極端に偏って考えてしまうと、とても大きなストレスを受けることになります。
例①:
Aさんは仕事でミスをしてしまいました。Aさんは「私のせいで迷惑をかけた。自分はダメなヤツだ」と考え(「認知」)深く落ち込んでしまいました。
Aさんは上司にミスを報告して(「行動」)「気にしなくてもいいよ」と言われましたが、「心の中ではかなり怒っているだろう。これからどのように接して良いのかわからない。」と思いました(「認知」)。
その後、上司と話すのが怖くなりました。(「行動」)
Aさんはさらに自分を責めるようになり(「認知」)、落ち込むことが多くなり、朝起きるのも辛くなってしまいました。(「行動」)
このような順に「認知の歪み」が重なり、「行動」にも影響して体の反応にもでてしまっている例になります。
そこで、次のように考え方を変えられると気持ちがラクになるかもしれません。
「私のせいで迷惑をかけた。自分はダメなヤツだ」と考え(「認知」)
→ ミスしてしまったことは仕方がない。同じミスを繰り返さないように気をつけよう。(認知の修正)
「心の中ではかなり怒っているだろう。これからどのように接して良いのかわからない。」と思いました(「認知」)
→ 上司はとても気を遣ってくれている。今後は何かあれば事前に相談するようにしよう(認知の修正)
例②:
Bさんは顧客の期待に応えられるように一生懸命に仕事をしていました。
顧客からの要望に少しずつ応えているうちにだんだんと顧客の要望が多くなり、すべての対応は無理だと感じるようになりました。(「認知」)
顧客に対応の難しさを説明しても(「行動」)理解してもらえず、どうしても対応してほしいと言われるばかりでした。
「どうにかしなくてはいけない」と考えた(「認知」)Bさんは顧客の要望を実現するべく無理をして対応していました(「行動」)。
対応すればしただけさらに顧客の要望は増えていき、要望対応をするにしたがって品質の低下が起こることが多くなり顧客からは「どうしてミスばかりしているのか説明してほしい」と言われることが多くなりました。
Bさんは「自分の能力が足りないためにミスが起きている」(「認知」)と思い、ひたすらに顧客には謝罪をしました(「行動」)。
結果、Bさんは客先に向かおうとすると手が震えるようになり(「行動」)、自分ではどうしようもできなくなってしまいました。
強い外的要因(プレッシャー)からストレスを感じるようになり、ひとりで全て抱え込んでしまっている例になります。
モンスタークライアントのように感じる方もいるかもしれませんが、顧客としては小さな要求を承認してもらったことでだんだんと要求が大きく強くなってしまったのだと考えられます。
これは行動心理学では「フット・イン・ザ・ドア」と呼ばれる手法(最初に小さな要求を承認させて、だんだんと大きな要求をするような手法)で、営業のテクニックとして広く知られていますが、人は無意識にでも同様の行動をしてしまうことはよくあることです。
そこで、次のように考え方を変えられると気持ちがラクになるかもしれません。
「どうにかしなくてはいけない」と考えた(「認知」)
→ これ以上は無理なので、要望を断るか、上司に相談をして力を貸してもらおう(認知の修正)
「自分の能力が足りないためにミスが起きている」(「認知」)
→ 要望が多すぎて対応ができない。顧客には期間を十分に伸ばしてもらうか、要望を次のステップに後回しにしてもらうなど説明をしよう(認知の修正)
認知には行動が伴うことが多い
「認知」の結果として、なにかしらの「行動」があります。
これらは2つでセットのように扱われることも多いため、下記セクションでも取り扱う「認知行動療法」が流行したことがありました。
メンタル不調からの回復に向けて
メンタルが不安定になってしまう要因の1つに極端にものごとを捉えてしまうことがあります。
心療内科や精神科で薬を処方してもらうことも大切です。けれども、それだけで状態が変わらないと感じる場合は自分の「認知の歪み」を変えていくことも方法の1つとして検討するのも良いと思います。
これを実現する心理学的な方法として「認知療法」や「行動療法」、「認知行動療法」があります。
自分自身でこれらを行う方法もインターネット上では散見されますが、
自分自身でこれらの療法を行うことは、一歩まちがえればさらに深い沼にはまっていく原因にもなりとても危険です。
必ず「担当医」や「カウンセラー(臨床心理士、公認心理士)」のような専門家に相談して、期間を決めて一緒に行うようにしましょう。
*カウンセリングは病院によって健康保険が利用できる場合ありますので、担当医に相談してみるとよいでしょう。
これらの療法は処方薬と同じで即効性のあるものではありませんので、あわてずゆっくり行うことを心がけることも大切です。
心の病気(脳の病気)については一気に完全回復を目指すのではなく、症状が安定して以前のような状態に戻る「寛解」につなげることが大切だと思います。